産婦人科を題材にした漫画は『コウノドリ』や『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』などの名作があります。
不妊治療の、その中でも体外受精や顕微授精に深く関わる「胚培養士」をテーマにした漫画『胚培養士ミズイロ』はそこに並ぶ名作のひとつだと思っています。
胚培養士とは、不妊治療の現場で卵子や精子、胚を扱う専門職です。
体外受精までステップアップした人間にとって、胚培養士とは医師や看護師とともに頭の上がらない存在と言えます。
実際に不妊治療クリニックでも直接お会いする場面はあり、ステップアップの際の説明をしたり、採卵後の卵の状態について報告してくれます。
しかし具体的にどんな環境下でどんな道具を使って仕事をしているかは、この漫画を読んで初めて知りました。朝練とかするんですね。。
胚培養士の仕事の話だけでなく、さまざまな夫婦の事情、症状、不妊治療そのものの話についても言及があります。
各話オムニバスなのでとても読みやすいです。
『ミズイロ』を描いているおかざき真理先生は、私にとって思い入れのある漫画家の一人です。
いろいろなテーマの漫画を描かれる方ですが、代表作としてはシビアなお仕事漫画の印象が強いです。
少し上の世代だと『サプリ』に馴染みのある方がいるかもしれません。
私は『サプリ』も好きですし、『&』と『かしましめし』をのめり込んで読んでいました。
おかざき先生の作品の特徴は容赦なく現実を突き付けてくるところ。
でもそれだけではなくて、「どうやったら死なずにしなやかに生きていけるか」というところまで描いてくれるところです。
『サプリ』では大手広告代理店の女性の死にもの狂いの働き方に震えましたし、『&』では非正規雇用のあやうさ、『かしましめし』では折れた人生の続け方のようなものをみている気がします。
そんなおかざき先生が不妊治療をテーマにした漫画を描いてくれている事実だけで私は励まされます。
しかも嬉しいのは、『ミズイロ』を青年誌で連載していることです。
女性のあいだでは、不妊治療についての知見はなんとなく広まっているものですが、男性側ではまだまだな印象がある現状。
(不妊の原因の半分は男性側にあることを知らなかったり、治療のことをただ「集中的に行為をするだけ」との誤解を持っていたり。。そういった方に私は現実に会ったことがあります。)
不妊とは無縁であっても、治療について知っている男性が増えたらいいなと思います。
なお、おかざき先生ご自身は3人のお子さんがいらっしゃいます。
不妊治療をしていない方が不妊治療が身近でない方向けに、解像度の高ーい作品を提供してくれてるなんて、とてもありがたいことです。


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