不妊治療の成功率を高めるための選択肢として「複数胚移植」が話題に上ることがあります。
特に30代後半になると、加齢に伴う妊娠率の低下を感じ、早期の成果を目指して複数胚の移植を検討したくなります。
タレントの中川翔子さんが、2度の流産を乗り越えた末に胚を2個移植し、双子の男の子を出産したニュースは記憶に新しいところです。
彼女のような事例に背中を押される一方、複数胚の移植にはどんなリスクがあるのでしょうか。
なぜ今は「原則1個」?複数胚移植の歴史と進歩
かつて(2000年代半ば頃まで)の体外受精では、3〜4個以上の胚を同時に戻すことが一般的でした。
当時は胚を体外で長く育てる技術や、受精卵を傷つけずに凍結保存する技術が未発達だったため、1個あたりの着床率が低く、「とにかく数を戻して妊娠率を上げる」必要があったからです。
しかし、これにより三つ子や四子などの多胎妊娠が急増。
母体への過度な負担や、早産・低体重児といったリスクが深刻な医療問題となりました。
その後、胚盤胞まで安全に育てる「培養技術」や、生存率の高い「ガラス化凍結保存技術」が飛躍的に進化。
1個の胚でも高い妊娠率を維持できるようになったことで、2008年に日本産科婦人科学会は「移植する胚は原則1個」とするガイドラインを定めました。
30代後半における複数胚移植(2胚移植)のメリット
1. 1回の移植あたりの妊娠率向上が期待できる
30代後半は卵子の質の変化から、1つの胚が着床・継続して成長する確率が低下しやすくなります。
複数の胚を同時に戻すことで、少なくともいずれか1つの胚が良好に育つ可能性が高まり、1周期(あたりの妊娠成立を後押しします。
2. 治療期間短縮による負担の軽減
不妊治療が長期化すると、通院費用や時間の工面だけでなく、「またダメかもしれない」という精神的ストレスが大きくのしかかります。
複数胚の移植によって1回のチャレンジで結果が得られやすくなれば、治療全体の期間短縮や精神的な焦りの軽減につながる側面があります。
事前に知っておくべきリスクと注意点
1.多胎妊娠のリスクと身体的負荷
複数胚移植における最も重要なリスクは、多胎妊娠(双子など)の発生率が大幅に上がることです。
双子の妊娠は大きな喜びである一方、医療の現場では「高リスク妊娠」に位置づけられます。
中川翔子さんも、妊娠確定後に医師から「高齢、多胎。ハイリスクをなめちゃいけませんよ」と注意を受けながら慎重に出産へ臨んだことを明かしています。
母体には妊娠高血圧症候群や早産のリスクが伴い、赤ちゃんの低体重や管理入院の可能性も高まります。
2.貴重な胚の消費
複数の胚を同時に使うため、もし着床に適さない体調や環境であった場合、貴重な受精卵を一度に失ってしまう可能性もあります。
1つの胚の移植繰り返し行う方が、累計での妊娠率は同等でありながら多胎リスクを低く抑えられるケースも少なくありません。
ガイドラインと実際の不妊治療現場のリアル
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、原則として「単一胚移植」が推奨されています。
ただし、「35歳以上」または「2回以上続けて妊娠が成立しなかった場合」には、2胚移植が選択肢として認められています。
実際に私も胚移植は一つずつでした。
私が通っていたクリニックでは、複数を同時に移植するやり方について説明もありましたが、かなり消極的な姿勢でした。
それだけ高齢の多胎妊娠は高リスクということなのだと思います。
「双子・三つ子=不妊治療で授かった子ども」というイメージは根強いかもしれません。
現在の治療ではそんなことはなく、その背景には培養技術や凍結保存技術の向上があるというのは、この分野の先進性に驚くばかりです。
高齢になれば妊娠にさまざまなリスクがあります。
しかし時を経たからこその恩恵もあるということかもしれません。


コメント